2010年12月11日 一人一票実現国民会議
カード配り山手線2周目代々木駅編
 
文・松沢直樹 (@naoki_ma) 写真・冨田きよむ (@kiyomutomita)
 
住所によって国政選挙の1票の価値に差が生じる問題―いわゆる「1票の格差問題」について、関心を持つ人が増えている。主に法曹志望者の学生が中心となって、「駅活」なる活動が繰り広げられているのはご存知だろうか。
東京、大阪、福岡で活動を続ける賛同者がおり、その数は各地方で増え続けている。12月11日。夕刻7時からJR代々木駅西口(東京)で行われた「駅活」を取材した。
彼らの活動に触れる前に、ソーシャルメディア・ツイッター上で関心を集めている「1票の格差問題」について触れておく必要があるだろう。1票の格差問題とは、有権者の住所によって、自分が投じた票が1票以下の効果しかなくなってしまう問題だ。
現在の国政選挙で決められる衆議院の定数は480人、参議院は242人。
このうち、公職選挙法という法律の第4条で、衆議院議員は小選挙区制度で300人、参議院は146人を選ぶことが決まっている。
本来、多数決で公平に議員を選出するなら、衆議院議員選挙の立候補者は(日本全国の有権者数÷300)。参議院議員の立候補者は(日本全国の有権者数÷146)の得票を得れば、国民の信任を得たと考えることができる。
ところが、現在の小選挙区制度選挙は、各ブロックの有権者数を考えた上で、当選者数を決めていない。しかも、単純に得票数順に議員を選出するため、多数決の原則が反映された公正な選挙にはなっていない。
多数決原則が反映された公平な選挙を行うとしたら、そのブロックの(有権者数÷「300ないし146」)で、衆議院・参議院の当選枠人数を決めなければ、公正な選挙にはならない。残念ながら、この「多数決の原則」からほど遠い選挙がずっと行われ続けているのだ。
たとえば、衆議院の小選挙区選挙だと、高知三区では、人口25万人に対して候補者が一人当選する。ところが、東京一区では、人口52万人に対して一人が当選する形になっている。つまり、高知三区の有権者に対して、東京一区の有権者は、投票の価値が0.5票しかないことになる。
単純に多数決で当選者枠を決めると、人口の多い選挙区から当選者が多数出ることになる。人口の少ない地方に優位性を持たせるなどの配慮が行われているわけではない。都会だから優遇、地方だから冷遇ともいえない不思議な状態のまま、選挙が行われているのだ。
たとえば、参議院小選挙区選挙の場合、鳥取県に住む人の選挙権を1票とすると、北海道は0.21票、東京0.23票、愛知0.25票、三重0.32票、京都0.47票、大阪0.21票という状態になる。
まずは、次のサイトで、あなたの選挙権の価値を調べてみてほしい。きっと驚くはずだ。
一人一票実現国民会議 http://www.ippyo.org/
今の日本の選挙制度は、住所によって1票の価値が異なるため、国会議員の多数を、少数の有権者が選出していることになっている。
一人一票実現国民会議の資料によると、衆議院では45パーセント、参議院では、40パーセントの有権者が、過半数の国会議員を選出する形になってしまっているという。
これでは、国民の意見が反映されているとは到底言えない。
それにもかかわらず、国は、憲法には違反しておらず、問題がないという姿勢を示し続けている。

この問題について、一人一票国民会議を組織する弁護士たちが、各地方で訴訟を起こしている。
1票の格差を理由に、7月の参議院選を無効と主張した訴訟について、去る11月、東京高裁は請求を棄却したものの、1票の格差については違憲であるという判断を示した。また、先日判決が申し渡された広島高裁でも同様に違憲判決が下された。
これらの画期的な判決の影には、ツイッターをはじめ、様々な出会い方をした若物たちの地道な活動がある。彼らは、自分の周囲の人たちに対して、一票の格差問題の矛盾を伝えている。その一つが「駅活」という活動だ。
「駅活」とは、一人一票国民会議が用意した、1票の格差を問題提起する名刺大のカードを、道行く人に配る活動だ。ツイッター上では、相当の方がカードを受け取ってくれているという報告がされているが、今日はどうだろうか。
写真は、一人一票国民会議のマスコットをあしらったTシャツを着て、JR代々木駅前の交差点でカードを配る学生さんの一人。
この日は、入れ替わりで合計5人が集まった。集まった順に、駅前の交差点、繁華街の入り口などに散って、道行く人にカードを配りはじめる。土曜日の夜ということもあり、足早に家路を急ぐ人、また、居酒屋などのちらしと勘違いしたのか、訝しげに見ながら過ぎ去る人も多かった。ただ、受け取った人のほとんどは、歩きながらもカードの内容によく目を通し、中には立ち止まってインタビューに快く答えて下さる方もいた。
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